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東京都立高校入試英語スピーキングテストは何が問題なのか?

先月東京都が都立高校入試としてスピーキングテストを実施しました。

スピーキングテストについては、過去には大学入試で実施されている共通テストに民間英語試験と共に
「四技能」というキャッチフレーズで導入が検討されました。
その際に様々な方面から様々な問題点が指摘され、文科省が実施目前で導入を断念した経緯があります。
その残骸として残ったのが、現行で行われている長文読解だけのリーディングテストです。
より多面的な能力を見ようと改革を試みた結果、試験内容が以前より乏しくなってしまったのは皮肉なことです。

東京都では共通テストへの導入が進んでいた時に2023年度の入試へのスピーキングテスト導入を決め、
その後共通テストへの民間英語導入が中止になっても、都立高校入試への導入は止まりませんでした。

そして先月11月27日に本試験が行われました。
想像通り様々な問題点が指摘されています。

運営の問題
 試験は都教委とベネッセが共同で作成しています。
 しかしながら、試験内容はベネッセが実施するGTECとそっくりです。
 これでは都立入試がベネッセのGTECおよびGTEC関連商品の販売促進に利用されていると言われても仕方がありません。
 また、スピーキングテストの申し込みにはベネッセに顔写真や名前など個人情報を提供しなければなりません。
 覚えている方もいると思いますが、過去にベネッセは以前2000万人以上の情報漏洩事件を起こしています。

採点の問題
 採点はフィリピンで行われるそうです。
 採点者の質が問われていますが、それ以上に問題だと思うのは、採点に疑問を持った際に開示請求できないことです。
 不受験者の取り扱いについても問題があります。
 やむを得ない事情により受験できなかった生徒は、
 その生徒の筆記試験の点数が近い生徒のスピーキングテストの得点とするということです。
 つまり、他の受験生の点数を使うというあってはならない措置です。

試験会場の問題
 生徒を前半と後半に分け、同じ問題で実施しました。
 ところが前半の生徒が話す内容が隣の部屋で待機する後半の生徒に聞こえていたそうです。
 公平性という点で大きな問題があります。

出題内容の問題
 中学の学習指導要領を逸脱した文法が出題されました。
 これに対して都教委は「それぞれの単語は知ってるはず」と苦しい答弁をしています。
 これは想像ですが、ベネッセが作成した問題をきちんと吟味しないまま出題したのではないでしょうか。
 以前ベネッセのセミナーに参加したことがありますが、英文法を軽視する会社なのだなという印象を受けました。
 ですからベネッセが学習指導要領を逸脱してくることは私としては想定内なのですが、
 要は都教委が試験内容の確認を怠ったということです。ベネッセにほぼ丸投げだったのではないかと推察します。

今回のスピーキングテストに関して色々挙がっている問題の中で、特に私が問題だと思っている点を挙げましたが、
これらの多くは共通テストへの民間英語試験導入の際にも指摘されていたことで、
それを踏まえて都教委が準備すればもっと問題は減らせたと思います。
実施前に有識者の声に真摯に耳を傾けなかったことが招いた結果です。

都教委は実施後、「大きな問題は無かった」と述べています。
耳を疑うようなコメントですが、そう考えるなら現在指摘されている問題に対して納得のいく説明をするべきです。
都教委は生徒の教育を司る組織です。その姿勢は子供たちの範となるべきです。
有識者の声をきちんと聞いた上で議論を尽くし、事前に想定できる問題点は極力減らす姿勢が求められます。
もし根本的な問題点が解消されなければ、スピーキングテストを中止する勇気も必要です。

今回の東京都立高校入試英語スピーキングテストは対岸の火事ではありません。
この先茨城県も同様の杜撰なスピーキングテストを導入するという可能性もあります。
今回の入試にまつわる問題点を公にし、議論を尽くした上でスピーキングテストはどうあるべきか判断していくべきだと思います。

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